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東京高等裁判所 平成7年(行ケ)102号 判決

東京都新宿区西早稲田3丁目31番11号

原告

株式会社土壌浄化センター

同代表者代表取締役

新見正彰

同訴訟代理人弁理士

滝田清暉

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官 清川佑二

同指定代理人

山田幸之

花岡明子

主代静義

関口博

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第1  当事者の求めた裁判

1  原告

「特許庁が平成5年審判第1527号事件について平成7年2月22日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決

2  被告

主文と同旨の判決

第2  請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

原告は、名称を「傾斜地利用の汚水処理方法およびその装置」とする特許第1162238号発明(昭和55年3月3日出願。以下「本件特許」といい、その発明を「本件発明」という。)の特許権者である。原告は、平成5年1月19日、請求の範囲の減縮又は不明瞭な記載の釈明を目的として、次項記載の内容の訂正審判の請求(以下「本件訂正審判請求」という。)をした。特許庁は、この請求を平成5年審判第1527号事件として審理した結果、平成7年2月22日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、平成7年3月13日原告に送達された。

2  本件訂正審判請求の内容

(1)  特許請求の範囲の減縮を目的として、

訂正事項〈1〉として、特許請求の範囲第1項に記載の「前記土壌中で前記汚水を放出し、」を「前記土壌中で、放出された汚水を一時的に停滞させる水槽をその下方に有する汚水放出管から前記汚水を放出し、」に訂正し、

訂正事項〈2〉として、特許請求の範囲第10項に記載の「前記土壌中に前記汚水を放出する放出管を埋設して成り、」を「前記土壌中に、放出した汚水を一時的に停滞させる水槽を下方に有する汚水放出管を埋設して成り、」に訂正するとともに、

(2)  それに合わせて明細書の発明の詳細な説明の項の記載を不明瞭な記載の釈明を目的として、

訂正事項〈9〉として、明細書7頁13行、14行に記載の「本発明は、前記本発明方法を最適に実施するため、傾斜上部」を「本発明は、飽和条件での汚水の浸透を防止することができると共に、傾斜上部」に訂正し、

訂正事項〈10〉として、明細書7頁18行の読点の後に、「元来」を挿入し、8頁1行に記載の「現象をいい、」を「現象をいうが、前記飽和浸透水流の存在は必ずしも必要ではない。」に訂正し、

訂正事項〈14〉として、明細書9頁3行と4行の間に「水槽7は、飽和条件での汚水の浸透を防止することができる限り、その構成は限定されることはない。例えば水槽7中に礫や砂を入れておいても良く、土壌等の過度の落下を防止するために、上部に網を設けても良い。」に訂正しようとするもの。

3  審決の理由の要点

(1)  本件訂正審判請求の内容は、前項記載のとおりである。

(2)  これに対して、当審において平成6年9月29日付けで通知した訂正拒絶理由の概要は、訂正事項〈9〉及び〈14〉については、そのいずれに関しても、訂正前の明細書には記載されていない新たな技術的事項を付加するものであるから、訂正後の特許請求の範囲を実質的に変更するものであり、訂正事項〈10〉については、訂正することにより明細書の記載を不明瞭にするものであるから明瞭でない記載の釈明とは認められず、これらの訂正は特許法126条1項(平成5年法律第26号による改正前のもの。以下、同じ。)又は2項(平成6年法律第116号による改正前のもの。以下、同じ。)の規定に適合しない、というものである。

(3)  これに対する審判請求人(原告)の意見書の内容は、概ね次の通りである。

〈1〉 減縮した発明においては、不透水性の水槽7によって重力浸透が防止されること、及びそれによって飽和条件での汚水の浸透も防止されることは、事実として、当業者が直ちに理解できることであり、第2図(別紙図面1参照)の発明は、実質的に、「飽和条件での汚水の浸透を防止することのできる態様」であることは疑いがありません。また、「防止」という文言は「抑制」という程度でも使用できるから「飽和条件での汚水の浸透を防止することができる」を飽和浸透水流が全くない場合のみの場合に訂正したと解することは妥当でなく、「防止」の語を上記の如く厳密に解さないかぎりは、〈9〉の訂正が不明瞭な記載の釈明に該当することは明らかである。

〈2〉 飽和浸透水流に誘導されて生ずると考えられていた誘導毛管現象と同じ現象が、飽和浸透水流がなくても生ずるということは出願時において公知でありました(審判請求書に添付した参考資料1(本訴における甲第2号証の3)参照)。

それにもかかわらず、明細書中における「誘導毛管現象」の定義は従前のままであり、これによれば本件発明においては、恰も、飽和浸透水流を伴わない場合を排除しているかの如き誤解を与えかねないところから、訂正事項〈10〉は、これを訂正したものであり、不明瞭な記載の釈明である。

〈3〉 水槽7は明細書8頁20行に記載されている如く不透水性でありますから、少なくとも、該水槽から溢水する迄は汚水が重力浸透することはなく、従って、該水槽が汚水の重力浸透を防止すること、及び、これによって、緻密土壌層3を浸透していく飽和浸透水流も防止することが、第2図に示された本特許発明の原理であることは当業者に明らかであるから、それを確認的に文章化したに過ぎない訂正事項〈14〉は明瞭でない記載の釈明であります。

(4)  そこで検討するに、

〈1〉 訂正事項〈9〉については、

(a) 訂正前の特許明細書には「本発明は、前述の第1、第2の目的を達成する手段として、後述する誘導毛管現象を研究解明して、それを傾斜地利用の汚水処理方法に応用した汚水処理方法であり、若干の傾斜角度を有し、殆ど透水しない基盤上に適当な土壌層を設定し、傾斜上部における前記土壌中で処理すべき汚水を放出し、この土壌中で誘導毛管現象を惹起せしめることにより土壌中を不飽和状態で汚水を浸透移動せしめ、もって、汚水の各種処理を行なうことを特徴とする。」(明細書(本訴における甲第3号証)7頁4行~13行)、「ここで、前記誘導毛管現象とは、土堰堤の漏水現象の研究過程で発見された公知の現象であり、不透水層に沿って流れる飽和浸透水流の上部土壌層に同方向に流れる不飽和の浸透水流が発生する現象をいい、この現象で土壌中の表面に近い位置を不飽和条件で汚水が移動することを汚水処理に応用したものが本発明方法である。」(明細書7頁17行~8頁3行)、「母岩1の傾斜上部であって前記透水係数大の土壌層4内には、合成樹脂膜等で製された不透水性の水槽7が埋設され、該槽7の上方には、汚水を土壌層4中に断続的及び/又は連続的に放出可能な放出管8が、該槽7に近接して埋設されている。・・・前記放出管8を通じて処理すべき汚水を、適当な流量、流速、流圧で、断続的、又は、連続的に土壌層4に放出すると、放出された汚水は、一時的に水槽7内に停滞し、該槽7の最高水位になった時に水槽7から溢水し、土壌層4中を傾斜に従って流下していこうとする。この場合、流下汚水の一部は、緻密土壌層3を矢印A方向に浸透していく飽和浸透水を呈するが、残部は、前述の誘導毛管現象により、透水係数小の土壌層4を矢印B方向に浸透していく不飽和条件での浸透水を呈する。尚、第2図に示す如く、土壌層4の厚さが土壌層3のそれよりも厚い場合、不飽和条件で浸透する汚水の量が、飽和条件で浸透する汚水の量よりも多大であり、また、浸透する距離が長いほど、不飽和浸透水の量が多大となる。」(明細書8頁19行~9頁20行)、「本発明は、傾斜上部における土壌中で汚水を放出し、土壌中で誘導毛管現象を惹起せしめれば、充分な効果を得ることができるので、表層の腐蝕植物層および不透水製水槽は省略してもよい。」(明細書12頁11行~15行)が記載されている。

(b) 上記記載によれば、訂正前の明細書には、誘導毛管現象とは不透水層に沿って流れる飽和浸透水流の上部土壌層に同方向に流れる不飽和の浸透水流が発生する現象をいうことと明記されており、放出管8の下部に水槽7を設けた場合でも、前記記載中の特に「前記放出管8を通じて処理すべき汚水を、適当な流量、流速、流圧で、断続的、又は、連続的に土壌層4に放出すると、放出された汚水は、一時的に水槽7内に停滞し、該槽7の最高水位になった時に水槽7から溢水し、土壌層4中を傾斜に従って流下していこうとする。この場合、流下汚水の一部は、緻密土壌層3を矢印A方向に浸透していく飽和浸透水を呈するが、残部は、前述の誘導毛管現象により、浸透係数小の土壌層4を矢印B方向に浸透していく不飽和条件での浸透水を呈する。尚、第2図に示す如く、土壌層4の厚さが土壌層3のそれよりも厚い場合、不飽和条件で浸透する汚水の量が、飽和条件で浸透する汚水の量よりも多大であり、また、浸透する距離が長いほど、不飽和浸透水の量が多大となる。」のように飽和浸透水を伴う誘導毛管現象を呈することが明記され、第2図にも浸透係数が小さい緻密な土壌層3を飽和浸透水Aが流れることが示されており、水槽7によって重力浸透が防止されること及びそれによって飽和条件での汚水の浸透が防止されることは記載されていない。審判請求人は、第2図の発明は実質的に、「飽和条件での汚水の浸透を防止または抑制することのできる態様」である旨主張するが、訂正前の明細書及び第2図には前述のように飽和浸透水を伴う誘導毛管現象を呈することは記載されていても、飽和条件での汚水の浸透を防止または抑制することのできることは記載されていない。

(c) したがって、訂正事項〈9〉のように訂正することは汚水放出管の下方に水槽を設けることの技術的意義を変更するものであるから、訂正後の特許請求の範囲を実質上変更するものである。

〈2〉 訂正事項〈10〉については、

(a) 訂正前の特許明細書には9頁6行~20行に「前記放出管8を通じて処理すべき汚水を、・・・浸透する距離が長いほど、不飽和浸透水の量が多大となる。」(明細書8頁19行~9頁20行の前記引用箇所参照)と記載されている。

(b) この記載によれば、流下汚水の一部は、飽和浸透水を呈するが、残部は、誘導毛管現象により、不飽和条件での浸透水を呈すること、その際、不飽和条件で浸透する汚水の量が、飽和条件で浸透する汚水の量よりも多大であること、また、浸透する距離が長いほど、不飽和浸透水の量が多大となることが記載されているものであって、訂正後の明細書に記載のように飽和浸透水流の存在が必ずしも必要でないことについての記載は存在しない。

(c) したがって、訂正後のように「前記飽和浸透水流の存在は必ずしも必要ではない。」と訂正することは訂正前の明細書の記載と矛盾することとなり、かえって明細書の記載を不明瞭にするものであって、訂正事項〈10〉の訂正は明瞭でない記載の釈明とは認められない。

なお、審判請求人は飽和浸透水流を伴わない誘導毛管現象が公知であったから、訂正事項〈10〉のように訂正することは不明瞭な記載の釈明である旨主張しているが、たとえ飽和浸透水流を伴わない誘導毛管現象が公知であるとしても、本件特許の訂正前の明細書には、飽和浸透水の存在を否定したりその不存在を示唆する記載はないから、訂正事項〈10〉のように訂正することは許されない。

〈3〉 訂正事項〈14〉については、

(a) 訂正前の明細書には「ここで、前記誘導毛管現象とは、・・・汚水処理に応用したものが本発明方法である。」(明細書7頁17行~8頁3行の前記引用箇所参照)、「母岩1の傾斜上部であって前記透水係数大の土壌層4内には、・・・浸透する距離が長いほど、不飽和浸透水の量が多大となる。」(明細書8頁19行~9頁20行の前記引用箇所参照)と記載されている。

(b) これらの記載によれば、誘導毛管現象とは、不透水層に沿って流れる飽和浸透水流の上部土壌層に同方向に流れる不飽和の浸透水流が発生する現象をいうこと、放出管8を通じて放出された汚水は、一時的に水槽7内に停滞し、該槽7の最高水位になった時に水槽7から溢水し、流下汚水の一部は、飽和浸透水を呈するが、残部は、誘導毛管現象により、不飽和条件での浸透水を呈すること、その際、不飽和条件で浸透する汚水の量が、飽和条件で浸透する汚水の量よりも多大であること、また、浸透する距離が長いほど、不飽和浸透水の量が多大となるものであって、訂正後の明細書に記載のように水槽7が飽和条件で汚水の浸透を防止できることについては記載がない。

審判請求人は、水槽7は不透水性であるから少なくとも該水槽から溢水するまでは汚水が重力浸透することはない旨主張しているが、このことは汚水が水槽から溢水するまでの一時的な過程をとらえたにすぎず、このことをもって、審判請求人の主張するように水槽が汚水の重力浸透を防止するものであるということはできない。

(c) したがって、訂正事項〈14〉のように訂正することは汚水放出管の下方に水槽を設けることの技術的意義を変更するものであるから、訂正後の特許請求の範囲を実質上変更するものである。

(5)  以上のとおり、訂正事項〈9〉及び〈14〉については、そのいずれに関しても、訂正後の特許請求の範囲を実質的に変更するものであり、訂正事項〈10〉については、明瞭でない記載の釈明とは認められないので、本件の訂正は特許法126条1項及び2項の規定に適合せず、これを認めることはできない。

4  審決を取り消すべき事由

審決の理由の要点(1)ないし(3)は認める。

同(4)〈1〉のうち、(a)は認める。(b)のうち、上記記載によれば、訂正前の明細書には、誘導毛管現象とは不透水層に沿って流れる飽和浸透水流の上部土壌層に同方向に流れる不飽和の浸透水流が発生する現象をいうことと明記されており、放出管8の下部に水槽7を設けた場合でも、前記記載中の特に「前記放出管8を通じて処理すべき汚水を、適当な流量、流速、流圧で、断続的、又は、連続的に土壌層4に放出すると、放出された汚水は、一時的に水槽7内に停滞し、該槽7の最高水位になった時に水槽7から溢水し、土壌槽4中を傾斜に従って流下していこうとする。この場合、流下汚水の一部は、緻密土壌層3を矢印A方向に浸透していく飽和浸透水を呈するが、残部は、前述の誘導毛管現象により、浸透係数小の土壌層4を矢印B方向に浸透していく不飽和条件での浸透水を呈する。尚、第2図に示す如く、土壌層4の厚さが土壌層3のそれよりも厚い場合、不飽和条件で浸透する汚水の量が、飽和条件で浸透する汚水の量よりも多大であり、また、浸透する距離が長いほど、不飽和浸透水の量が多大となる。」のように飽和浸透水を伴う誘導毛管現象を呈することが明記され、第2図にも浸透係数が小さい緻密な土壌層3を飽和浸透水Aが流れることが示されていることは認め、その余は争う。(c)は争う。

同(4)〈2〉のうち、(a)は認める。(b)のうち、この記載によれば、流下汚水の一部は、飽和浸透水を呈するが、残部は、誘導毛管現象により、不飽和条件での浸透水を呈すること、その際、不飽和条件で浸透する汚水の量が、飽和条件で浸透する汚水の量よりも多大であること、また、浸透する距離が長いほど、不飽和浸透水の量が多大となることが記載されていることは認め、その余は争う。(c)は争う。

同(4)〈3〉のうち、(a)は認める。(b)のうち、これらの記載によれば、誘導毛管現象とは、不透水層に沿って流れる飽和浸透水流の上部土壌層に同方向に流れる不飽和の浸透水流が発生する現象をいうこと、放出管8を通じて放出された汚水は、一時的に水槽7内に停滞し、該槽7の最高水位になった時に水槽7から溢水し、流下汚水の一部は、飽和浸透水を呈するが、残部は、誘導毛管現象により、不飽和条件での浸透水を呈すること、その際、不飽和条件で浸透する汚水の量が、飽和条件で浸透する汚水の量よりも多大であること、また、浸透する距離が長いほど、不飽和浸透水の量が多大となるものであることは認め、その余は争う。(c)は争う。

同(5)は争う。

審決は、訂正前の明細書から自明の事項を看過したため、訂正審判請求を認めなかった違法があるから、取り消されるべきである。

(1)  取消事由1(訂正事項〈10〉)

本件発明の訂正前の明細書及びそれに添付された図面(甲第3号証)(以下「訂正前明細書」という。)からは、飽和浸透水流の存在が必ずしも必要でないことは記載されているに等しいものであり、訂正事項〈10〉の訂正は、明細書に開示された技術内容の矛盾をなくすものとして認められるべきである。

〈1〉 不飽和条件で浸透する汚水の量が飽和条件で浸透する汚水の量より多大となっている装置を用いて、少量の汚水を処理した場合、又は、訂正前明細書の特許請求の範囲第4項に記載された発明のように土壌層の厚みを十分厚くした装置を用いて少量の汚水を処理した場合には、飽和条件で重力浸透する汚水が基盤まで到達できず飽和浸透水流を形成することができなくても、不飽和条件で浸透する汚水が零になることはない。このことは、浸透する距離が長いほど不飽和浸透水の量が多大となるとの訂正前明細書の記載と矛盾しないばかりか、緻密な土壌層3に到達する汚水が存在しない程度の少量の汚水を供給した場合でも、汚水は土壌の毛管作用によって拡散し、不飽和浸透するという経験則とも合致する。

〈2〉 訂正前明細書には、「この現象で土壌中の表面に近い位置を不飽和条件で汚水が移動することを汚水処理に応用したものが本発明方法である。」(甲第3号証8頁1行ないし3行)と記載されているが、本来この誘導毛管水は、サイホン流動と呼ばれることが適切であった。サイホン流動には、飽和浸透水流が存在しない(甲第2号証の3第39頁)。すなわち、本件発明における不飽和条件での汚水の浸透移動には、当然に飽和浸透水流を伴う場合と伴わない場合がある。

元来の誘導毛管水は、甲第11号証の293頁の図(別紙図面2参照)に示すような地下水の運動を起こさせると、上流部で土の毛管作用によって水が地下水面上に吸い上げられ、この水はほぼ地下水面に平行して流れ、下流部に至って地下水面へ下降する。このように、この誘導毛管水の浸透には、上昇部分と地下水面に平行な部分と下降部分とが必ずあることから、地下水の運動に伴って、その運動方向と同じ方向に運動するように現れる誘導毛管水は、土の毛細管のサイホン作用によるものである。しかしながら、本件発明においては、前記293頁の図に示されている高い水位の水面が存在せず、水は上方から供給されるので、前記「上昇」部分は、存在しないから、上記元来の誘導毛管現象と完全に一致しているわけではない。したがって、本来、本件発明における不飽和浸透水流を元来の誘導毛管現象によって定義することは、技術的に正しかったとはいえない。しかも、元来の誘導毛管現象もサイホン作用によって生じている(甲第2号証の3第38頁、39頁)。

〈3〉 そうすると、本件発明で使用する「不飽和条件で移動する汚水」を誘導毛管現象という言葉で定義することは、この定義を厳密に解すると、同じように汚水を浄化することができ、本来分けることのできない傾斜土壌中で生ずる汚水の不飽和浸透を、特に飽和浸透水流と共に生ずる部分と、それ以外の部分に無理に分けた上で〔(3)4、5頁も〕、前者しか表さないことになるので技術的に正しく定義したとはいえないものである。

(2)  取消事由2(訂正事項〈9〉及び〈14〉)

訂正事項〈9〉及び〈14〉の訂正は、訂正前の本件発明のうち特に水槽7を設けた場合に減縮したことの技術的意義を明確にしたものにすぎず、汚水放出管の下方に水槽を設けることの技術的意義を変更するものではない。

〈1〉 訂正前明細書の第2図に記載された水槽7が重力浸透を防止又は抑制することは、当業者に自明であるから、第2図には、飽和条件での汚水の浸透を防止又は抑制することのできる装置が記載されている。すなわち、不透水性の水槽7を設ければ、汚水放出管8から放出された汚水の大部分が重力浸透によって不透水性の水槽7に貯留され、その下の重力浸透の量が左右され、残りの小部分が不飽和浸透によって周囲に拡散することは、第2図から自明である。そして、水槽7が全体としての重力浸透の量、すなわち基盤に到達して飽和浸透水流を形成する汚水の量を左右するということは、重力浸透を防止又は抑制することと技術的に同義である。

水槽に溜まった汚水が毛管現象によって周囲に拡散し得ることは周知である。訂正前明細書では、汚水の放出の仕方は特に限定されていないところ、汚水放出量が少なく、水槽7から溢水する量が少なければ、溢水した汚水は周囲の土壌に吸収されて基盤まで到達することはできないから飽和浸透水流を形成することはできないが、不飽和浸透によって周囲の土壌に吸収されるので、不飽和浸透水となって浄化される。そして、このことは、訂正前明細書中の「この場合、流下汚水の一部は、緻密土壌層3を矢印A方向に浸透していく飽和浸透水を呈するが、残部は、前述の誘導毛管現象により、透水係数小の土壌層4を矢印B方向に浸透していく不飽和条件での浸透水を呈する。尚、第2図に示す如く、土壌層4の厚さが土壌層3のそれよりも厚い場合、不飽和条件で浸透する汚水の量が、飽和条件で浸透する汚水の量よりも多大であり、また、浸透する距離が長いほど、不飽和浸透水の量が多大となる。」(甲第3号証9頁11行ないし20行)との記載とも一致する。

〈2〉 なお、「防止」は、本来「防ぎ止めること」を意味し、「完全に止める」という意味で用いられることがないことは明らかである。

第3  請求の原因に対する認否及び反論

1  請求の原因1ないし3は認める。同4は争う。審決の認定、判断は正当であって、原告主張の誤りはない。

2  反論

(1)  訂正前の本件発明の要旨

本件発明は、特許請求の範囲に記載のように、

〈1〉 傾斜角度を有し、殆ど透水しない基盤上に適当な土壌層を設定する。

〈2〉 傾斜上部の土壌層中で、汚水を放出する。

〈3〉 土壌層中で誘導毛管現象を惹起せしめる。

〈4〉 土壌層中で不飽和条件での汚水の浸透移動を生ぜしめる。

ことを構成要件とするものである。そして、上記〈3〉の「誘導毛管現象」とは、「ここで、前記誘導毛管現象とは、・・・不透水層に沿って流れる飽和浸透水流の上部土壌層に同方向に流れる不飽和の浸透水流が発生する現象をいい、・・・」(甲第3号証7頁17行ないし8頁1行)で定義され、前記不透水層とは、特許請求の範囲に記載の「殆ど透水しない基盤」(以下「不透水層」という。)を意味することは明らかである。不透水層は、飽和浸透水流を形成するために必要な層であって、それ故、特許請求の範囲の構成要件となっているのである。

以上のとおり、本件発明は、土壌層中に汚水を放出し、土壌層の下部の不透水層に沿って流れる飽和浸透水流を形成することにより、該流れの上部土壌層中に不飽和浸透水流を発生させて汚水を処理する方法である。

(2)  訂正事項〈10〉について

訂正事項〈10〉の訂正は、前記訂正前の「誘導毛管現象」の内容を変更し、不透水層に沿って流れる飽和浸透流の上部に同方向に流れる不飽和の浸透水流が発生する現象にとどまらず、飽和浸透水流が形成されることなく単に土壌中を流れる不飽和浸透水流、すなわち「毛管現象」による浸透水流を「誘導毛管現象」の範疇の中に含めることになる。

なお、訂正前明細書中の「第2図に示す如く、土壌層4の厚さが土壌層3のそれよりも厚い場合、不飽和条件で浸透する汚水の量が、飽和条件で浸透する汚水の量よりも多大であり、また、浸透する距離が長いほど、不飽和浸透水の量が多大となる。」(甲第3号証9頁16行ないし20行)との記載も、飽和条件で浸透する汚水の量が相対的に少ないことを示すにとどまり、飽和浸透水流が必ずしも必要でないことを示すものではない。

原告がいう「元来の誘導毛管現象」が甲第11号証の293頁の図(別紙図面2参照)で示されるようなものであったとしても、同図で示されるものにおいても、高い所から低い所へ流れる水(飽和浸透水流)に沿い、かつその上部において平行に流れる誘導毛管水(不飽和浸透水流)が存在するのであるから、訂正前明細書でいう誘導毛管現象と「元来の誘導毛管現象」とは、基本的に何ら変わるものではない。

また、甲第2号証の3第39頁の下の図(別紙図面3参照)で示されるサイホン流動は、同頁の上の図(別紙図面3参照)で示される、飽和浸透水流の上部を不飽和浸透水流が流れる現象、すなわち、訂正前明細書にいうところの「誘導毛管現象」とは明らかに異なる。しかも、本来この誘導毛管水は、サイホン流動と呼ばれることが適切であったとの原告の主張を裏付けるものは何もないから、本件発明における不飽和条件での汚水の浸透移動には、当然に飽和浸透水流が伴う場合と伴わない場合があるとの原告の主張は失当である。

したがって、訂正事項〈10〉の訂正は、明瞭でない事項の釈明とは認められないとした審決の認定に誤りはない。

(3)  訂正事項〈9〉及び〈14〉

本件発明において、水槽7が全体としての飽和浸透水流の量を左右する場合があることは原告主張のとおりであるとしても、本件発明は、前述のように、誘導毛管現象、すなわち不透水層に沿って流れる飽和浸透水流の上部土壌層に同方向に流れる不飽和の浸透水流が発生する現象を利用する汚水処理方法であるから、本件発明においては、飽和浸透水流の形成が前提となり、飽和浸透水流が全くなくなってしまうことはあり得ないのである。したがって、訂正事項〈9〉及び〈14〉のように「飽和条件での汚水の浸透を防止する」と訂正することは、訂正後の特許請求の範囲を実質上変更するものである。

第4  証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録記載のとおりであって、書証の成立はいずれも当事者間に争いがない。

理由

1  請求の原因1(特許庁における手続の経緯)、同2(本件訂正審判請求の内容)及び同3(審決の理由の要点)については、当事者間に争いがない。

そして、審決の理由の要点(1)ないし(3)は当事者間に争いがない。

2  そこで、原告主張の取消事由の当否について検討する。

(1)  訂正事項〈10〉について

〈1〉  訂正前の本件発明は、特許請求の範囲第1項で、「傾斜地の上部で処理すべき汚水を放出し、該傾斜に従って当該汚水を浸透流下させることにより汚水処理を行なう傾斜地利用の汚水処理方法において、傾斜角度を有し、殆ど透水しない基盤上に適当な土壌層を設定し、傾斜上部における前記土壌中で前記汚水を放出し、この土壌層中で誘導毛管現象を惹起せしめて土壌層中で不飽和条件での汚水の浸透移動を生ぜしめ、当該浸透移動の過程で汚水処理を行なうことを特徴とする傾斜地利用の汚水処理方法。」(甲第3号証1頁5行ないし14行)と規定し、「誘導毛管現象を惹起せしめ」ることを必須の構成要件としている。

そして、本件発明の訂正前明細書には「本発明は、前述の第1、第2の目的を達成する手段として、後述する誘導毛管現象を研究解明して、それを傾斜地利用の汚水処理方法に応用した汚水処理方法であり、若干の傾斜角度を有し、殆ど透水しない基盤上に適当な土壌層を設定し、傾斜上部における前記土壌中で処理すべき汚水を放出し、この土壌中で誘導毛管現象を惹起せしめることにより土壌中を不飽和状態で汚水を浸透移動せしめ、もって、汚水の各種処理を行なうことを特徴とする。」(明細書7頁4行~7頁13行)、「ここで、前記誘導毛管現象とは、土堰堤の漏水現象の研究過程で発見された公知の現象であり、不透水層に沿って流れる飽和浸透水流の上部土壌層に同方向に流れる不飽和の浸透水流が発生する現象をいい、この現象で土壌中の表面に近い位置を不飽和条件で汚水が移動することを汚水処理に応用したものが本発明方法である。」(明細書7頁17行~8頁3行)と記載されている(この事実は、当事者間に争いがない。)。

以上のとおり、本件発明は、「誘導毛管現象」を惹起せしめることを必須の構成要件とし、「誘導毛管現象」の意味は、訂正前明細書の発明の詳細な説明中で、前記のとおり「不透水層に沿って流れる飽和浸透水流の上部土壌層に同方向に流れる不飽和の浸透水流が発生する現象」と明瞭に定義されているところ、「誘導毛管現象」の意味を発明の詳細な説明の記載された定義どおりに解釈すると特許請求の範囲の記載の技術的意義を一義的に明確に理解できず、その実施ができないとか、「誘導毛管現象」との用語を使用したことが一見して誤記に相当するものであることが明らかであるとするなどの事情も見いだせないから、訂正前の本件発明は、「不透水層に沿って流れる飽和浸透水流」の存在を必須の要件とするものと解すべきである。

〈2〉  原告は、訂正前明細書には、不透水層に沿って流れる飽和浸透水流の存在しないものも記載されているに等しい旨主張する。

(a) しかしながら、前記のとおり、飽和浸透水流の存在しないものを含むことが特許請求の範囲又は発明の詳細な説明中の定義中に記載されていない以上、訂正前明細書の記載は不透水層に沿って流れる飽和浸透水流の存在しないものを含まないものとして明瞭である。この場合に、訂正前明細書の発明の詳細な説明中の定義に相当する部分に本件訂正にかかる「飽和浸透水流の存在は必ずしも必要ではない」を加えることは、訂正前明細書の記載と矛盾を来すことになり、明瞭でない記載の釈明とは認められないことは当然である。

(b) 次に、原告の主張が、訂正前明細書に接した当業者にとって、特許請求の範囲第1項に記載された「誘導毛管現象」の意味を、不透水層に沿って流れる飽和浸透水流が存在しないものも含むと理解することが自明である旨の主張を含むものであるとしても、そのように解すべき根拠はない。

すなわち、訂正前明細書中に、「第2図に示す如く、土壌層4の厚さが土壌層3のそれよりも厚い場合、不飽和条件で浸透する汚水の量が、飽和条件で浸透する汚水の量よりも多大であり、また、浸透する距離が長いほど、不飽和浸透水の量が多大となる。」(9頁16行ないし20行)と記載されていることは、当事者間に争いがない。しかし、上記記載が「この場合、流下汚水の一部は、緻密土壌層3を矢印A方向に浸透していく飽和浸透水を呈するが、残部は、前述の誘導毛管現象により、浸透係数小の土壌層4を矢印B方向に浸透していく不飽和条件での浸透水を呈する。」(9頁11行ないし16行)と飽和浸透水の存在を指摘する記載に続くものであり、第2図にも浸透係数が小さい緻密な土壌層3を飽和浸透水Aが流れることが示されていることも、当事者間に争いがない。そうすると、上記記載は、飽和条件での浸透水の存在を前提として、不飽和浸透水の量との相対関係を述べているにすぎないと解すべきであり、飽和浸透水流が存在しない場合についても記載しているものとは認められない。

また、甲第3号証によれば、訂正前明細書の特許請求の範囲第4項は、「上層土壌層が、下層土壌層よりも充分に厚い特許請求の範囲第3項記載の汚水処理方法。」(1頁末行ないし2頁1行)を内容とするものであることが認められる。この記載も、訂正前明細書中の前記「この場合、流下汚水の一部は、緻密土壌層3を矢印A方向に浸透していく飽和浸透水を呈するが、残部は、前述の誘導毛管現象により、浸透係数小の土壌層4を矢印B方向に浸透していく不飽和条件での浸透水を呈する。」との記載や第2図の記載を考慮すれば、やはり飽和浸透水流の存在が必要でないことを示すものではない。

したがって、これらの記載から、当業者にとって、飽和浸透水流の存在しないものが訂正前明細書中の特許請求の範囲(発明の詳細な説明中の定義を含む。)はもちろん、発明の詳細な説明や図面に記載されているに等しいと解することはできない。

〈3〉  さらに、原告は、誘導毛管現象の意味は飽和浸透水流の存在を必要としないサイホン流動の意味に理解されるべきである旨主張する。

(a) 甲第3号証によれば、特許請求の範囲を含めて訂正前明細書には「サイホン流動」なる用語は全く使用されず、もっぱら「誘導毛管現象」なる用語が使用されている。しかも、サイホン流動が公知の技術であるからといって、そのことから直ちに訂正前明細書の誘導毛管現象がサイホン流動を意味することにはならないことは当然である。

(b) しかも、訂正前明細書に接した当業者が訂正前明細書中の「誘導毛管現象」との記載を「サイホン流動」の意味に解するとの事情も認められない。

すなわち、甲第11号証(山崎不二夫-「誘導毛管水の研究」の解説)では、誘導毛管水について、「地下水面に接する毛管水帯の水分が地下水の流動の方向にこれに類似した運動をする毛管水のこと」(293頁3行、4行)等と記載されているが、地下水の存在が不要であることを示す記載はない。また、甲第10号証(八幡敏雄-土壌の物理)94頁、95頁にも、「誘導毛管水」についての説明がされているが、それは飽くまで地下水面の上部に形成されるものとしての説明であり、地下水が不要であることを示す記載はない。甲第2号証の3第38頁には、「これ(D)の上に、こういう川みたいなのがあって(E)、そこを、その・・・こっち(D)より遅い速度だけど、こういう流れ(E)があるっていう事が分かった。で、これは、誘導毛管水と、その名前、付けたんだけど」(10行ないし12行)と記載されているが、これも誘導毛管現象が飽和浸透水の上に生ずるものとして説明されている。

確かに、甲第2号証の3第38頁には、「けれど土壌浄化法に直接の利用されているのは山崎先生の、あのサイホン流動ね」(38頁19行、20行)と記載されている。しかし、この「サイホン流動」を誘導毛管現象と名付ける記載はない。しかも、前記甲第10及び第11号証に説明されているように、誘導毛管現象との概念がサイホン流動との概念とは別に存在する。そして、誘導毛管現象を「不透水層に沿って流れる飽和浸透水流」と解すると、当業者にとって、本件発明を実施することができないとの事情も認められない。そうすると、サイホン流動が原告の主張するようにきわめて常識的な原理であるとしても、訂正前明細書に接する当業者が、訂正前明細書の特許請求の範囲に記載された「誘導毛管現象」をサイホン流動の意味で使用されていると理解するものと認めることはできない。

〈4〉  したがって、訂正事項〈10〉の訂正は、飽和浸透水流の存在しない汚水浄化方法を含まないものとして明瞭であった訂正前明細書の記載をかえって不明瞭な記載にするものであるから、明瞭でない記載の釈明とは認められず、特許法126条1項の規定に適合しないといわなければならない。

(2)  訂正事項〈9〉及び〈14〉

原告は、訂正前明細書の第2図に記載された水槽7が重力浸透を防止又は抑制することは、当業者に自明であるから、第2図には、飽和条件での汚水の浸透を防止又は抑制することのできる装置が記載されていると主張する。

〈1〉  まず、原告は、「防止する」との用語が「完全に止める」という意味で用いられることはないと主張する。しかしながら、防止とは、一般に、防ぎ止めることを意味し、完全に止めることも含むものと解されるから、「飽和条件での汚水の浸透を防止する」との訂正事項〈9〉及び〈14〉の証正は、完全に止めることも訂正後の明細書に持ち込むものといわなければならない。

〈2〉  次に、原告は、訂正前明細書の第2図に記載された水槽7が重力浸透を防止することは、当業者に自明であると主張する。不透水性の水槽を設ければ、汚水放出管から放出される汚水のある量は水槽に貯留されるので、不透水性の水槽の有無が重力浸透の量、すなわち基盤に到達して飽和浸透水流を形成する汚水量を左右することは原告主張のとおりである。しかしながら、前記(1)に説示のとおり、訂正前明細書では、第2図にも浸透係数が小さい緻密な土壌層3を飽和浸透水Aが流れることが示されており、「この場合、流下汚水の一部は、緻密土壌層3を矢印A方向に浸透していく飽和浸透水を呈するが、残部は、前述の誘導毛管現象により、浸透係数小の土壌層4を矢印B方向に浸透していく不飽和条件での浸透水を呈する。」と説明されていることからすると、訂正前明細書で汚水の放出の仕方が特に限定されていないことを考慮しても、第2図等を根拠に、訂正前明細書に、飽和条件での汚水の浸透を防止することのできる装置が自明のものとして記載されていたと解することはできない。

〈3〉  したがって、「飽和条件での汚水の浸透を防止する」ことを訂正内容に含む訂正事項〈9〉及び〈14〉の訂正は、汚水放出管の下方に水槽を設けることの技術的意義を変更するものであるから、訂正後の特許請求の範囲を実質的に変更するものであり、特許法126条2項の規定に適合しないといわなければならない。

3  よって、原告の本訴請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 伊藤博 裁判官 濵崎浩一 裁判官 市川正巳)

別紙図面1

〈省略〉

別紙図面2

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別紙図面3

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